太陽光の売電価格が屋根設置でアップ?2025年FIT単価の最新事情

高騰する電気代と脱炭素への対応が求められる今、企業にとって再生可能エネルギーの導入は避けて通れない課題になっています。そんな中、2025年度のFIT制度では、屋根上に設置された太陽光発電に対して、従来よりも高い売電単価が設定されました。とくに導入から6年間は1kWhあたり19円の高単価が適用され、投資回収のスピードが大きく改善される見込みです。本記事では、屋根上設置に限定された制度の詳細、地上設置との収益比較、企業導入時のシミュレーション、そして想定事例までを網羅的に紹介します。収益と社会的評価の両立を目指す企業にとって、屋根の有効活用が新たな経営資源となるかもしれません。

2025年度FIT制度の概要と変更点

FIT制度(固定価格買取制度)は、再生可能エネルギーの導入を促進するために導入された仕組みです。発電した電力を国が一定価格で長期間買い取ることで、発電設備の導入リスクを軽減し、普及を後押ししています。

ここ数年、FIT制度による売電単価は年々引き下げられてきました。特に、10kW以上の低圧太陽光については買取価格の低下が進み、企業の導入メリットが小さくなりつつありました。

ところが、2025年度の改定では、屋根上設置に限って売電単価が見直され、上昇する方向で設定されています。これは、土地の使用を抑制しながら再エネ導入を加速させる目的があり、未活用の屋根スペースに注目が集まっている背景があります。

資源エネルギー庁の公表資料によると、50kW未満の屋根設置型太陽光は、2025年度において1〜6年目は19円/kWh、7年目以降は8.3円/kWh(いずれも税抜)の売電単価が設定されています。一方、地上設置などの場合は12円、または50kW以上で8.9円とされており、屋根上設置が優遇されているのが明らかです。

売電単価の比較(屋根上と屋根以外)

2025年度のFIT制度では、太陽光発電の設置場所と出力規模によって、売電単価が大きく異なります。中でも、屋根上に設置された設備には特別な高単価が設定されており、導入判断に影響を与える要因となっています。

設置形態出力規模FIT単価(2025年度・税抜)特徴
屋根上設置型10kW以上50kW未満19.00円/kWh(6年間)
8.30円/kWh(7年目以降)
高単価で初期回収が早い
屋根以外設置型10kW以上50kW未満12.00円/kWh(20年間固定)単価は一定、屋根上より低い
地上設置型50kW以上(非入札)8.90円/kWh(20年間固定)入札対象外の上限単価、小規模業者向けなど

たとえば、年間55,000kWhを発電する設備をそれぞれの条件で導入した場合、6年間の売電収入は次の通りです。

  • 屋根上設置(6年間):19.00円 × 55,000kWh × 6年 ≒ 6,270,000円
  • 屋根以外(10〜50kW未満):12.00円 × 55,000kWh × 6年 = 3,960,000円
  • 地上設置(50kW以上):8.90円 × 55,000kWh × 6年 = 2,937,000円

屋根上設置では、他の設置形態に比べて6年間で200〜330万円以上の売電差が生じます。

投資回収シミュレーション

ここでは、企業が屋根上に太陽光発電を導入した場合の投資回収シミュレーションを紹介します。

想定条件

項目数値備考
設備容量49.5kWFIT対象上限直前で設置
初期導入費用約800万円機器・設置工事含む
年間発電量約55,000kWh自家消費を除く余剰売電想定
売電単価(6年)19.00円/kWh(税抜)FIT制度に基づく高単価
売電単価(7年以降)8.30円/kWh(税抜)20年固定買取

年間売電収入の想定

  • 初年度〜6年目:55,000kWh × 19円 = 約1,045,000円/年 → 6年合計:約627万円
  • 7年目〜20年目:55,000kWh × 8.3円 = 約456,500円/年 → 14年合計:約639万円

20年間の売電収入合計:1,266万円程度
→ 約8年での投資回収が見込まれる

企業にとっての導入メリット

太陽光発電の屋根上設置によるFIT売電は、収益性に加え、企業の社会的価値向上にもつながります。

経済的メリット

  • 遊休スペースの有効活用
  • 高単価売電による早期回収
  • 電力自家消費による光熱費削減
  • 補助金・税制優遇との組み合わせで費用圧縮

社会的・経営的メリット

  • 脱炭素経営の推進
  • ESG・SDGs対応で外部評価アップ
  • 取引先・顧客からの信頼向上

単なるコスト対策ではなく、中長期的な競争力向上の手段としても有効です。

実際の導入事例(想定ケース)

ケース:製造業A社(千葉県)

  • 工場屋根に49.5kW設置
  • 導入費用:約800万円(補助金活用)
  • 年間発電量:約55,000kWh
  • FIT売電による年収入:約104万円
  • 投資回収:約8年で完了見込み
  • CO₂削減:約25トン/年

補助金を活用しながら高単価の売電を実現。自社のCSRレポートにも活用され、他工場への展開も計画中。

まとめ:屋根が資産に変わる時代、逃さず活用を

2025年度のFIT制度は、屋根上太陽光発電の導入にとって非常に有利な条件が整っています。特に、当初6年間の19円/kWhという高単価設定は、これまでにないチャンスといえます。

売電単価の違いは、収益性だけでなく投資回収スピードにも直結します。地上設置と比較しても、屋根上設置は6年で200万円以上の差が出るケースもあり、企業の財務戦略にも好影響を与えます。

さらに、脱炭素・省エネへの対応、ESG評価の向上、補助金との併用など、単なるコスト回収以上の価値をもたらしてくれるのが屋根上太陽光の強みです。

ポイントの振り返り

  • 2025年度は屋根上設置に限り、FIT単価が19円/kWh(6年目まで)
  • 地上設置との差は大きく、年間で約8万円〜10万円の売電差
  • 投資回収は約8年で実現可能(補助金活用時はさらに短縮)
  • ESG・SDGs対応として、企業価値の向上にも貢献
  • 自家消費・全量売電の組み合わせで経済効果を最大化

屋根は建物の一部でありながら、これまで活かされにくかった空間です。今こそ、その面積を収益に変える選択が、企業の次の一手になるかもしれません。

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